2013年03月01日

2月の本

二月は逃げる、と言いますが、本当にその通り、あっという間に過ぎ去ってしまいました。
残されたのは前半のチョコレート戦争で増えた我が脂肪のみ。。。さてどうしよう。。。
それはともかく。
脳みそが砂糖漬けになっていた頃はあまり本が読めずにいたので、今回は冊数もページ数も振るいません。漫画すら手をつけておらず積んでいるものが出る始末です。あらまあ。
そういうわけで二月は15冊、3,348ページという記録でありました。一日平均119.6p、少ないですねえ。
そのなかから今回取り上げたい本は、今さら感にあふれております作品です。

天地明察 [単行本] / 冲方 丁 (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)私がまだ学生だった頃、一芯二葉さんで一緒にお茶したぬこさまに全力でオススメをいただき、各書店さんなどでも猛プッシュ、映画に漫画にとメディアミックスも話題となりながら、全然触れてこなかった作品があります。
本屋大賞にも選ばれ、直木賞の候補にもなったその作品を、『天地明察』と、いいます。
冲方丁さんといえば私は『マルドゥック・スクランブル』のイメージが強かったんですよね。
マルドゥックはすごく面白くて、そしてそれ以上に、読む側もへとへとに疲れるような作品でした。すごく疲れた。肩肘と虚勢をこれでもかというほど張って、生き抜いていく、そんな話でした。
だから『天地明察』も、基本の流れは同じ熱さをもっているのだとうと思っていたのです。
歴史もの? なるほど。マルドゥックはSFだったので一気に時代を遡る感じだなあ。
内容は……星、暦の話? ほうほう。そこに関わる人が命を尽くして「がんばる」物語なのか。うわあ熱血。これはそうとう体力があるときにがっつり読まないと搾り取られてしまいそうだぞ。
そんな風に誤解をして、誤解をしたまま数年が過ぎ。
文庫が出ても、上下巻ということで(一気に読める作品なら上下巻まとめて買うけれど、マルドゥック系なら上巻をまず買って読み終わった段階でその近くの本屋さんに行って下巻を買うのが良いなあと考えていたのです)やっぱりしばし様子見をしてしまっていました。
ようやく読む踏ん切りがついたのは、小松エメル『枯れずの鬼灯』を読んでもう少しがっつり江戸時代の熱い物語を読みたいなあと思えたから。
前の本を読み終わったその足で本屋さんに行き、上下巻を買い込み。
さあ読むぞ、と気合を入れて。
お気に入りのブックカバーをつけて、表紙をめくって。
吸い込まれました。
びっくりしました。
私の想像と、全然違う筆致だったので。

こんなにさらさらと淡々と、静かな筆致の作品だったのか。
それが最初の印象でした。
マルドゥックが油絵の具をどっさり塗りたくった原色の作品とするならば、こちらは淡い色合いで描かれた水彩画のような。
でも決して水墨画ではなく、そして意外と強い色合いも含まれているけれど、全体としてはあくまでも淡く明るい雰囲気の。
とてもすてきな作品でした。

江戸時代の、暦の話です。
そしてそれ以上に、算学の話です。
天の理は数字によってあらわされる。そんなことを思えます。
まず主人公が良い。渋川春海は趣味に没頭する朴念仁で、今でいう算学オタク。時に自分の仕事をそっちのけにして問題に取り組んでしまう熱中ぶりです。それでも、ひとたび仕事をやらせるとなかなかの腕前というあたりうらやましい。
職業、碁打ち。趣味、算学等々。いいねえ。
そしてそんな主人公が恋焦がれてやまない相手が、よりにもよってあの、「和算の大家」関孝和なわけですよ。
読んでて血が沸騰しましたよね。
関孝和といえば、上毛かるたで知ったのがそもそものはじまり。何が何やら言葉の意味も分からずにとにかく「ワサンノタイカ、セキコーワ!」と諳んじていた幼少時代。
少し成長すると関孝和について調べるようになり、ますます「なんて人なんだ」と感動を新たにしていました。
そんな関孝和が、まさか、登場するなんて。
しかもほとんど神か悪魔かのごときその伝説っぷり。生ける伝説とはこのことです。
いやあ良かった。
そんな関孝和に強い憧れを抱きつつ、春海は進むわけです。
さあそれが。
ビルドゥングス・ロマンなんですよねー。
平穏すぎる、定石どおりの日常ではなく、ソノサキニアルモノを求めている……その一方で諦念ももっている春海。そんな彼が否応なく、大きな渦に巻き込まれていきます。
笑いあり涙あり、淡々としかし冒険活劇もあり。
ラブロマンスもほのかに感じさせつつ、男たちのホモソーシャルな関係もあり。
屈辱と成長、失敗と未来、そんなもうまさしく王道の成長物語であり青春群像劇でした。春海の晩年まで描いているこの作品、青春時代は途中で終わるのでは、と? いえいえ。青春は年齢ではありません。そういうことを理解できます。この作品はひたすら、青春を描いたものだといえましょう。

今さらの今さらかもしれませんが、やっぱりあまりストーリーに言及するのは遠慮しておきます。
でも、これは、本当に、面白い!
絶対絶対オススメです。大プッシュしていたみなさまの気持ちがよく分かりました。
はー楽しかった。こういう出会いがあるから読書は楽しいですね。
さて、今月はどんな出会いがあるかしら。また本を読むのが楽しみになりました。
あ、ちなみに、カバーが好みなので今回掲げている表紙は単行本版です。悪しからず。

さて、今夜は、星空を見上げながら帰りましょうか。
posted by こうや at 21:00| 東京 ☀| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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