2011年09月20日

生涯に一度の食べ物

大学生特有の長い長い夏休みもそろそろ終わり。
夏休みの宿題っぽく、読書感想文でも久々に書き散らしてみようと思います。

蜜蜂のデザート [単行本] / 拓未 司 (著); 宝島社 (刊)
この夏はやたらと本を読みたくなりました。それも、自分の研究とはまったく関係のない、物語ばかり。
最近は気心の知れた作家さんの作品や評価の定まったその道の名作ばかり読んでいたので、ちょっと新しい風を取り入れたいなと思い、本屋さんをうろうろして気になった作品をメモしておき、片端から読んでみました。
だいたい7種類9店舗くらいの本屋さんをうろついて、それぞれが売りたい・もしくは売れている本の傾向が分かった気がします。
ただ売れていても自分とうまく合致しないとなかなか読む気になれなかったりするもので……難しいところ。けっこう大ヒット作品などでも読み逃しているものがあるんですよね。でも読書はそういうマイペースが許されるのがうれしい。気になって、読む気になって、読んだときが自分とその作品との最良のタイミングなのです。きっと。
それはともかく。
そんな感じで、新刊書店の「文庫本」平台や平積みを中心に、いくつか読んでみましたー(´∀`)

今回はこれ。『蜜蜂のデザート』。
《ビストロ・コウタ》シリーズの第二弾だったそうです。第一弾はデビュー作でもある『禁断のパンダ』のようで。シリーズものは順番に読むほうが楽しいと個人的には思っているのですが、これはちょっと逆転してしまいました。たまにはそういうのもありかも。はじめて読む作家さんです。
さて。ビストロというシリーズ名からも分かるとおり、主人公はビストロを経営するフレンチシェフ。小さなビストロは評判も上々で、幼い息子や美しい奥さんにも恵まれているようです。
そんな幸太さんに今回ふりかかってくるのは、「食の安全」問題。これはもう……考えさせられました。
近藤史恵『タルト・タタンの夢』を読んだときにも感じたことなのですが(そういえばあちらもビストロを舞台としたミステリですね。テイストは違いますが……大好きです)食事って人間の生活の中で一二を争うくらい大事なのに蔑ろにされやすい部分ですよね。
考え出すと怖い。
たとえばレストランなどで食事をするとき、たいてい厨房は見えません。中には有名シェフや知り合いが働いているなどで顔の創造がつく場合もありますが、その場合は余計に、その「顔」に対して信頼がおけなければ食べられない。
「あの人が作ったものだから安心して食べられる」
これが根底にないと、食べられない気がします。
おうちのご飯が安全だから〜、なんて親が言うのも、同じ理屈でしょう。
でも。
その食材は、卸業者さんやスーパーや八百屋さんや、そういうところから買うもの。その人たちに信頼がおけなければ、いくら料理人を信頼したところで怖くて食べられなくなってしまう。
さらにいえば、もともとは生産者を信頼できなければ、その食材の安全性なんて分からない。食の偽装問題はまさにそこを突いたものであるわけです。
逆に言えば、複雑化して幾層にも分化しているそのそれぞれの人を信頼できてはじめて、日本の食事……外食産業は成り立っているといえるのかもしれません。
信頼が前提として成り立っている危うい社会。
だからこそ偽装問題で揺れたり、この作品に言い知れぬ恐ろしさを覚えたりするわけなのです。
ましてやコンビニで売られているような食材は工場で大量生産されているわけで、そこには人の手のぬくもりだとかそういうのはほとんど介在しておらず、巨大な実験設備みたいなものでうごうご混ぜたりなんだりして、クローン兵士のように整然と並んだ食品が次々出荷されていくわけじゃないですか。そして作られてから人の口に入るまでにタイムラグがあり、大量生産しないといけないという制約もかかってくるため、化学の実験でお目にかかるようなカタカナの謎の物質が山ほど入っていたりもします。まあ成分表示なので実際にはおなじみのものだったりする場合もありますが、ああいうものの正体を知らなくても食べられちゃったりするんですよね。盲目の信頼。
食事は文字通り身体を作るもので、そういう「ヨクワカラナイモノ」が自分の身体の幾分かを構成していると考え出すと、どんどん底なし沼に入っていってしまえそうです。

何を言いたいのかよく分からなくなってきた……
そんなことをぐるぐる考えながら読みました。
ええと、ミステリとして順当に作られているなという印象。私は見事に引っ掛かりましたwww 悔しいwww なので面白く読めましたよん。ただし今回、やたらとすごそうなことは分かったのですが、デザートのイメージがちょっと伝わりにくかったかなあ。ミステリとして面白かったのですが「これは食べたい!」と思えるような食事は、特に印象に残りませんでした。
でも文体がするする読みやすいので、また機会があったら他の作品も手にとってみたいと思います。
posted by こうや at 22:00| 東京 ☀| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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