『西洋骨董洋菓子店』全三巻
著:よしながふみ
出版社:新書館
価格 :¥662-〜
発売日:2008/5/27〜
甘いものの美味しそうな本を紹介するなら、この漫画を抜かすわけにはいきません。
よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』。これは私にとって衝撃的な作品でした。
よしながふみという漫画家はもちろん知っていましたし、この作品が『アンティーク』というタイトルでドラマ化されていたことも知っていました。でもあまり機会がなくてなかなか読めずにいたのです。
だから、一読したときの衝撃ははかりしれませんでした。どうして今まで読まずにいたのだろう、いやでもだからこそ今初めて読める幸せを味わえる……
そんな複雑な気持ち。
住宅街の片隅にひっそりとオープンした洋菓子店、アンティーク。
働くのは、無精髭を生やしたオーナー兼接客担当と稀代のパティシエな伝説のゲイ、そして焼菓子担当の元ボクサーです。後々もう一人、信じられない不器用な男も加わりますが。四人ともタイプの違うイケメンなのでもちろん人気がありますが、何より独特な店の雰囲気と美味しい! ケーキに! 一度食べた人びとはやみつきになっていきます。
そんな彼らの人間模様と訪れる客のエピソードが綴られるほのぼのストーリー……かと思いきや、徐々に形を露わにする「過去」の重さに私はぞくりとさせられました。
現在と過去との、落差。それが大きければ大きいほど、現在のかけがえのなさが際立っていきます。
なぜこのタイミングで紹介したかというと、米澤穂信の期間限定シリーズ(世間では「小市民シリーズ」のようですが、私は断固として「期間限定シリーズ」と主張します)→美味しいお菓子やケーキ→西洋骨董洋菓子店という風に連想が働いたためです。単純です。
何せここに出てくるケーキがどれもこれもうっとりするほど美味しそうなんですよ!
見た目にも愛らしくちんまりとお皿に載せられたケーキたち。それを口に入れた瞬間の人びとの表情が……驚きと幸せに満ちた、なんともうらやましいものなのです。私もこんな表情を浮かべながらケーキを堪能してみたいと思ってしまうような。
ものの魅力を伝えるには、まず第一にそのもの自身を魅力的に描く必要がありますが、その次……ないしそれと同じくらい、「そのものに触れた人びとの反応」も必要となります。
いくら魅力的に見えるものでも、周囲の人びとの反応が鈍ければそれほど良いものとは思えません。逆に、一見魅力的に見えなかったとしても周囲の人びとの反応如何でいくらでも魅力的に見えてくるものもあるでしょう。
そしてこの漫画では、あらゆるものがその相互作用の中で魅力を何倍にも増しているのです。
読んでいるとどうしようもなく楽しくてうっとりしてしまいます。
ぴりりと刺激するスパイスとふんわり甘いお砂糖の共存した作品といえるでしょう。
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