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2009年06月21日

春は覆水盆に帰らず

『春期限定いちごタルト事件』
著:米澤穂信
出版社:創元推理文庫
価格 :¥609-
発売日:2004/12/18
タイトルが、なんともいえず魅力的でした。
私が米澤穂信のその本を手に取ったのは、背表紙に惹かれたためだと、胸を張って言えます。
春期限定いちごタルト事件。
帯に書いてあるキャッチコピーは、「いつかつかむんだ、あの小市民の星を」
……いったい何ぞや?
不思議に思いながらも、題名の可愛らしさと好みのイラストの表紙、偶然潤っていたお財布に膨れ上がる好奇心のため、私はその本をレジに持っていったのでした。

このシリーズには、主に三人の登場人物がいます。
メインキャラクターは、小鳩常悟朗くんと小山内ゆきさん。
中学時代から互恵関係を結んでいる二人は、お互いに平和な高校生活を送ろうと……小市民になろうと日々努力しています。
そしてメインのサブキャラクター、堂島健吾は小学校時代の小鳩くんの同級生。彼によって、小鳩くんたちの小市民計画は脅かされることになります。
そう、たとえば同級生の頼みごとに小鳩くんを巻き込んだり、家に呼んでは謎かけをしてみたり。

小鳩くんは「狐」、小山内さんは「狼」。二人の本性はそう呼び慣わされます。
小鳩くんは可哀想なことに、名前が体をあらわしているんですよね。常に悟って朗らかに。それが、小鳩くん。
小山内さんはもっと大変。一見、彼女は小学生のようなか弱い少女です。細くて小さな女の子。尼そぎ姿でセーラー服。ミルク色のカーディガンに緋色のマフラーをした、大人しくてもの静かな子。
そう、何もないときは。

作品自体は章立てもされておらず、短編集の雰囲気です。高校に入学した二人が静かに生きようと努力する話。
それでもやっぱり、狐と狼はちらつくけれど。
「日常の謎」ミステリなので、それぞれの事件は学校生活によくありそうなものばかり……か?
まあ、基本的に日常生活の延長線にある謎ばかり。そしてその中に浮かび上がる犯罪の影……
この二人は互恵関係ではあるけれどコンビを組むわけではなく、必要としているとき以外は二人でいたりもしません。
でもだからこそ、二人に「なろうとする」ときの努力には胸打たれたりも。
互恵関係を結んだ、小市民を目指す少年少女の未来やいかに?
大好きです。

ちなみに、春期限定の中で一番好きな短編は「おいしいココアの作り方」です。
これぞ究極の「日常の謎」ではなかろうか!?謎の提示から解決部分まで、すべてまるっと含めてジタバタしたくなるくらい可愛らしくて面白い!
ホクホクしてしまいますよ。

ついでに。
小山内さんの影響で甘いものを売るお店や喫茶店に入る頻度が増えた小鳩くん。
彼自身はそれ程甘いものが好きなわけではないらしいのですが……
いやいやいやいや!どれもこれも何て美味しそうなんでしょう!
描写があまりに的確で、小山内さんが甘いもの好きであると理解すると同時に、小山内さんの食べているものに惹かれてしまいます。読みながら涎が垂れてしまいそうです、じゅるり。
個人的に一番気になるのは、ハンプティ・ダンプティのケーキバイキングのケーキたちです。店名もなかなか良いですし美味しそうだし。
ああ甘いものを食べたいよう。
posted by コー at 21:00| Comment(0) | 読書:日本系 | 更新情報をチェックする
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